【 犬と鳩と顔の無い主 】 [絵ト性ト裸]

【 犬と鳩と顔の無い主 】

その夜の主に『飼いならされたフリをした犬』が餌を分け与えてもらおうと尻尾を振り近寄る。

主は上機嫌で雄弁に講釈をまき散らしながら存在を誇示する。

「いいやつだ、お前たちはこんな私を慕ってくれるんだな。いいか、そもそも~」

まるで裸の王様、お前の周りに群がる犬はお前じゃなくて「餌」に群がってんだよ。

クンクンクン・・・クンクンクン。

視力は人並み以下だが、聴覚と臭覚に優れた犬が今夜も餌を嗅ぎ分ける。

一番性質の悪いのはこいつら『犬』どもだ。

自慢の臭覚と聴覚でこの主から奪える餌がもう残り僅かだと悟ると他をあたる。

投げられた玉を走って取りに行くことも、主の声にも反応しない。

不満・怒り心頭の主が声を荒げる頃には別の主の周りに今度は群がる。

虚しさと寂しさと憤りに暮れる旧主は孤独の淵に陰を落としバカをみる。

主の間違いは「餌に群がる犬」という物事の本質に気付いていなかったこと。

平和の主調とされる「鳩」の群れも然り。

群れを成し、物音に反応し、悪臭を放つ。

今始まったわけじゃない。

こんなの世の常なのかもしれない。

何時の時代も、何処の国でも繰り広げられる「したたかな人間像」。

美しく美化されがちだが、群れの外から冷静にその人間模様を眺めていて吐き気がする。

もっとも少なからずとも彼らの目指す「成功への手段」が

孤軍ではなく一団となり進む姿、そのジレンマがそこにはあるのだけれど。

オレは犬も鳥も嫌いじゃない。

でも気まぐれで従順とは言えない「猫」が好きだ。



連日繰り広げられる大きな世界を夢見た「小さな小さなバカ騒ぎ」

犬と鳩と顔の無い主が今夜もまた何処かで同じ景色を繰広げるんだろう。



yoshiS 


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